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声(前)(連載)

「映画のチケットがあるんだけど、よかったら一緒にどうかしら」
備府は思わず後ろを確認した。誰もいない。向き直ると穂江がにっこりと笑いかけてくる。
「俺……ですか?」
「そうそう」
「……」
「嫌?」
備府は激しく首を横に振った。

「あーあ、今頃備府と穂江さんはデートかー」
矢追はカーペットにコロコロをかけながら肩を落とした。堂仁の部屋である。
部屋の角には来野がいる。例によって文庫本を開いている。
「あれには驚いたな」
「だよねえ、備府と穂江さんってあんまり話したことないよね」
「興味がわいたんじゃないか」
「んー」
矢追はベッドに飛び込んだ。スプリングが軋み、持ち主である堂仁と、ベッドに寄り掛かっていた来野はしかめっ面をする。
「あの二人が付き合うことになったらどうするんだ」
妙に慎重に紡がれた言葉に矢追は虚をつかれた顔をした。
「どうするって……何かすることある?」
「……そういう意味じゃねえよ」
来野が文庫本をかばんに放り込みすっくと立ち上る。
「オレ帰るわ」
「どしたの急に」
「めんどくさそうなにおいがした」
「……」
「いやもうなんか全体的にめんどくさい。屁が出るレベル」
屁こそしなかったものの、来野はとっとと部屋を出ていった。

「本当に出てっちゃった」
「あいつもすねてるんじゃないか?」
「穂江さんとられて?」
「とられたのはお前だっての」
「ん?」
「三人で遊ぶのいつ振りだと思ってんだ?ここしばらくお前備府にかかりきりだったろう。俺の部屋に来ても延々とあいつの話しやがって」
「……ごめん」

空から(ジョー)

なんかのさな

ぎ……じゃなくて芽

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