曲線で構成された外壁、どこまでもまっすぐ天に伸びる煙突、ガスドーム、這い回るパイプ、寸分の狂いなく働き続けるロボット。
この町は目まぐるしく生産を続ける。腹の中に入れば、静まり返った外見は一面でしかないことがわかる。
滞りなく本のやりとりを終え、二人は工場を出た。
「そういえば、何をつくる工場だったのかな」
はた、と足を止め二人は振り返った。つるりとした壁が静かに佇んでいる。
「ねじとか……」
「なんで螺子?」
矢追は微笑み、そっと胸をなで下ろした。いつぞやの水族館を思わせる「おつかい」に不穏さを感じていたのだ。
つられたように緩んだ備府の表情が巻き戻しのように強張った。
「やべぇ忘れてた……館長にこれも持たされてたんだ」
矢追は取り出した箱に見覚えがあった。