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炒飯1(連載)

「あいつ知り合い?こっちガン見してっけど」
矢追は首をめぐらせた。予想通り備府がいる。
友人に断りを入れてから備府に向かって手を上げた。
しばらく待つが彼がこちらに来る様子はない。矢追は軽く苦笑し、柱に寄り添うように立っている備府の元へ向かった。
「話……終わったのか」
「まあね、今日飲むからその連絡」
「そうか」
備府は口角を引きつらせた。
「備府も行く?かわいい子来るよ」
駄目元で誘う。備府は睨むようにしたあと、目を伏せた。
「俺が行ったってしょうがねえじゃん」
「……しょうがないって何?嫌なら別にいいよ」
備府はぽかんと口を開けて矢追を見た。自分も同じような顔をしていないだろうか、と矢追は思った。
意図したよりもずいぶん語気が荒い。
備府の眉間に皺が寄り、カバンのベルトを強く掴んだ腕に筋が浮かんだ。
「だって俺が行ったって浮くだけだろ。知り合いなんかいねえし」
「僕は?」
「は?」
「僕がいるでしょう」
「そりゃ……」
「余計なお世話かも知れないけど、もっといろんな人と話してみたら?」
「……急になんだよ」
備府の手首を見つめながら矢追は意気込んで続ける。目を見れないのは自信がないからだった。
間違ったことを言っているつもりはないが、タイミングも場所もでたらめであることは確かだ。
「今だって、」
目線を上げた矢追は途中で言葉を飲み込んだ。備府が酷く傷付いた目をしていたからだった。
「……行くよ」
落ち着いた調子で備府は呟いた。
「……行く。行っていいんだよな?」
矢追は首肯した。
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