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雲行き(連載)

備府には疑問があった。もしかしたらそれは小さな悩みと言ってもいいようなものかも知れなかった。
「備府ー」
背中にはべったりと矢追が張り付いている。腰に腕を絡ませ、肩に顎を乗せてくる。
「……おい」
「ん?何?」
「何じゃねえよ!つうかこっちが何なのか聞きてえよ!」
最近矢追のスキンシップが激しい。というよりもスキンシップの範囲を逸脱してはいないだろうか。近頃涼しくなってきたので自分の体臭の心配はそんなにしなくて済むのだが、問題はそこではない。
「矢追……拾い食いでもしたのかお前」
「してませんよーだ」
「まあどうでもいいがとっとと離れろ。そして腹を下せ」
視線が痛い。
帰宅途中の電車内で、備府は顔を上げることができなかった。
ついこの間の水族館でのバイトから矢追の様子がおかしい。
何かと備府に触れてくる。備府はその度に緊張で神経をすり減らしているのだった。
人目のないところならまだいい。注目をされるのには耐えられない。
普段何か困ったことがあると相談するのは矢追だった。矢追についての相談は一体誰にすればいいのだろう。
「いや、直接やめれって言えばいいのか……」
「ん?なんて言ったの備府」
矢追の穏やかな笑みに出鼻を挫かれる。
「……なんでもない」
きっと今はそういう気分なんだろう。
「そういう気分」とやらが全く想像つかないが、まあそういうことにしておこう、と備府は無理矢理自分を納得させた。

あの時の備府の記憶はさっぱりないようだった。
何事もなかったかのようだ。
実際何事もなかったのかも知れない。
自分が幻覚を見ていただけなのかも知れない。
巨大亀など水族館では飼育していないし、そもそも水中トンネルのゾーンは公開前で、まだ水すら張られていなかった。
館長室は帰る頃にはいつのまにか完全に修復されていたし、館員は「長いトイレだったね」と笑った。
あんなにはっきりとした幻覚があるとしたら、自分は何を信じていけばいいのだろうか。
帰りが遅くなったのでトランクいっぱいの本を抱えて備府の家に上がり込み、そのまま泊まった。
次の日書籍を図書館に届けに行った。
「水」という本に、館長は驚き半分、喜び半分と言った体だった。
その時ぽつりとこぼした言葉が、矢追に名状しがたい焦燥感を与えている。
「さすがだねえ、君達案外頑丈にできてるんだね」

その晩、昏睡病の再来が発表された。

拍手ありがとうございます

皆さんに眼精疲労根絶の呪いをかけます

>>宴ゲイ……。
酒が入ると同性にベタベタ甘える癖がある園芸。蔵元家で酒を勧められると必ずと言っていいほど蔵元に絡み、最後は膝枕で撃沈してしまうから蔵元家の従業員、特に若い女の子から密かに「宴ゲイ」と呼ばれ好奇な目で見られているとか?
(^ω^;)うわwwwこえぇよwwwww

その設定で読みたいwwww
スラスラ想像したその素晴らしい頭脳を恨むんだな!


>>多分野焼きは全国的な言葉じゃないかな

>>うちの地域は言わんけど、っていうかそのやり方をしない地域だけど
野焼きって言葉は好きです

「野」焼きってのが風情あるよね
当然だけど地方ごとに農法も違うんでしょうね
それどころか野焼きの匂いも違うかも知れませんね


>>水族館へんの続き楽しみにしてます
(・ω・)ノシ

ありがとうございます!やっと終わりました
ぶっちゃけまだ起承転結の起ぐらいです


>>新車怪人がいい感じ(^ω^*)

新車に付きまとう怪人なのかしら
それとも新車を売り付ける怪人かしら


>>ああん超かわいい

>>なにこのかわいい子
しんじられないかわいさですよ
(`・ω・´)

ありがとうございますwww

>>ジョーさんの題名の顔が変わった?
今更だけど水族館の最後に出てきたのはジョーさん?

気付いてくれて嬉しい!
ジョーさんと似てませんか?
⊂二二二( `◇´)二⊃

水族館編に出て来たのはジョーさんじゃないですっ
ジョーさんはもっと可憐ですぅ><


コメントなしのかたも、いつも見に来てくださるかたも、本当にありがとうございます!
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