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嘘ついた

矢追の話をあげるのは明日になります
待って下さっている方申し訳ありません
「す」と打とうとして電源ボタン連打しました
一体なんの罰があたったのか考え中です
宗教ってこういう「原因」を求める思考が生み出したのかも知れない
といったような現実逃避をしています

すまぬ

夢の影(メルヘンジョー)

彼女は眠っている。透き通った水に沈み、甲羅から鼻先だけを出して眠っている。
夏至の日も山の向こうへ去り、辺りには薄闇が降りていた。
彼女の小間使が屋根をかけ忘れ、頭上には星空が広がっている。
静かな宵だった。時たま蛙が思い出したように静寂を破るが、彼女はやはり眠っていた。
そこへふわりと影がやってきた。影はカラスによく似た形をしている。
影は彼女にそっと歩み寄り、声を掛けた。
「もし、お嬢さん」
彼女は眠っている。影は少しためらったあと、彼女の甲羅を控え目にノックした。
彼女はきゅっと縮こまり、それからぐっと伸びをしてあくびをした。頭を左右に振り、影に気付いて首をひねった。
「こんばんは」
影は恭しくお辞儀をした。
「こんばんは。どちら様?」
彼女は好奇心たっぷりに影を見た。
「旅の者です。おやすみのところ相済みません。この辺りで、私によく似た者をご覧になりませんでしたか?」
彼女は首をさらに伸ばして影をしげしげと見つめた。影からは冷たくて古いにおいがした。影はカラスに似ていたが、じっくり見れば見るほど輪郭が曖昧になっていくようだった。
「お役に立てそうにないわ」
彼女は少し怖くなり、首を戻して左目の横を前足で掻いた。
「そうですか」
影は心底残念そうにため息をつくと、気を取り直したように彼女に尋ねた。
「お嬢さんはいつからこちらにお住まいなんですか」
彼女はいつもの場所によじ登り、縁に掴まっている影の鉤爪に目を見張った。
「わからないわ、ずっと前からここにいるの」
「そうですか」
「あなたはなぜ旅をしているの?」
「人を、探しているんです」
「早く見つかるといいわね」
影は微笑んだ。
「あなたも一緒に行きませんか」
冷たくて古いにおいが強くなったようだった。彼女はしっぽがなんだか冷たいような気がして、くるりと甲羅の下にしまった。
「行かないわ」
「……そうですか、残念です」
「寝ているときはいつも旅をしてるのよ、わたし」
彼女はさっきまで見ていた夢を、水面に鼻をつけて泡をつくりながら思い出した。
「さっきまであの山の向こうにいたの。広い広い森があって、その中に一際大きな樹が生えていて、根元は泉が湧いていて、そこには小さな龍が一人で住んでいる。目はもみの葉みたいな緑で、鱗は銀色、角と爪に貝の内側みたいに虹がとけていて、たてがみは白くてふさふさしていた」
彼女は重くなってきたまぶたを無理矢理持ち上げて影を見やった。
「龍が『一緒にいてくれ』って言うんだけど、あそこはわたしには冷たすぎるのよ」
影は静かに彼女の話を聞いている。
「あなたもしあの龍にあったらお友達になってあげて。とてもさびしそうだもの。わたしはもちろん友達のつもり。会えなくてもね」
目を閉じたまま彼女は続ける。
「ごめんなさい、もう起きていられそうにないわ」
間もなく彼女は眠りについた。
「……おやすみなさい。いい夢を」
影は舌なめずりをすると空へ飛び上がった。
「なんて美味しそうな夢なんだ」
影は西へ西へと飛んで行く。
夜明けに追いつかれないように。
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