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リクエスト募集

矢追の話はやっとプロローグが終わったところです
終わりまでの枠組みは出来ていますが、日常が変質していく話になるはずです

こんな文章力で良ければどんどん書きますのでリクエストをお待ちしております
題材の食わず嫌いは致しません
単発になるか本編に組み込むかはわかりませんが、よかったらネタください

うどん缶って……

こんにゃくなんですね……

ムスカがラスボスだったのと同じくらいの驚きでした
冒頭で少女に瓶で殴られて昏倒するラスボス!
今でもその斬新さは色褪せていませんね
ムスカ大好きです

うどん缶もまあまあ好きです

初恋(後)(やおいとびっぷ)

駅を目指して二人は夜道を歩いた。
互いに酔っているので肩がぶつかりあう。
「備府君うちのサークルに入ればいいのに」
「嫌だ」
「なんで?」
「めんどい」
「そう?」
「うん」
横顔に目をやる。街灯に照らされた喉仏が目に付いた。
(かなり酔ってるな)
「次の部誌のテーマは『初恋』なんだけどさ、創作意欲湧いてこない?」
「湧いてこない」
子供のように頑迷に繰り返す様が面白い。
「サークルはめんどいんだ?」
「めんどい」
「僕がこうやって備府君に構うのもめんどい?」
「めんど……くない」
「ふふっ」
「キモっ!何笑ってんだよ!」
「いや別に」
備府の足取りは徐々に鈍くなり、しばらくして完全に止まった。
「どした?」
「……吐きそう」
「ちょ、ちょっと待って」
矢追は辺りを見回して頭を抱えた。
二人が向かっている地下鉄駅は大学のはずれにある。
一般棟と駅のちょうど中程のここには、花壇と噴水、とうに閉まった資料館しかない。
「とりあえず座って」
矢追は濡れたベンチを拭いて備府を座らせ、先に見える自販機の明かり目指して走った。
ミネラルウォーターを二本買って駆け戻る。
ベンチのわきに備府がしゃがんでいる。
「大丈夫?吐いちゃった方が楽になるよ」
背中をさすると震えているのがわかった。
「どうしよっか。部室まで戻って横になる?」
「家に帰る……」
「ん、歩ける?あっちに東屋があるからとりあえず休もう」
矢追は備府の腕をとって立たせる。傘を差し掛けながらふらつく自分を叱咤して歩く。東屋にたどり着く前に、備府は植え込みに二度嘔吐した。

「はいこれ。うがいしなよ、すっきりするよ」
「死にたい……」
「何言ってんの。こんなのよくあることだって。ほら、荷物下ろして」
東屋につくと、矢追はボトルを手渡し、かばんを下ろすのを手伝った。
「……お前は酔っ払って吐いて看病されたことあんのかよ」
「んー、ないかも」
「…やっぱりな!なんかそんな感じするわ」
「どんな感じ?」
「なんか……器用そうな」
矢追は顔を拭こうとハンカチを取り出し、さっきベンチを拭いたことに気付いてもう一度しまった。
「そうでもないと思うんだけど」
「そういうところだよ」
「…少しはよくなった?」
髪の毛を後ろにかき上げながら矢追は尋ねた。皮膚に張り付くのがうっとうしい。
「献血の時よりマシ」
あの時は緊張しすぎておかしくなるかと思った、と備府は言った。
雨は降り続いている。
「初恋と言えばさ」
備府が口を開いた。
「小学一年のときに朝顔育てたんだけどさ」
「ああ、僕の学校もそうだったよ」
「芽が出てしばらくして、先生が『朝顔さんがなんてお話してるか聞いてみましょう』って言うんだよ」
備府は脱力したまま呟くように続ける。
「うん」
「みんな『水が欲しいって』とか『早く大きくなりたいんだって』とか言ってんだ」
「うん」
「でも俺には全くその声が聞こえない。朝顔さんの声が。みんなにはちゃんと聞こえてるのに」
「……」
「そこで初めて気付いた、なんつーか、みんな自分とは違うんだっていうか、人ってそれぞれでバラバラなんだなーって。みんな違う事考えてるんだなって」
「うん」
「それまではみんな俺と同じようにカブト虫が好きで人参が嫌いだと思ってたんだよ」
「…うん」
「ものすごい衝撃受けて呆然としてたら、ななめ後ろに座ってた子が手を挙げて『先生、わたしには朝顔さんの声が聞こえません』って怒ったみたいな顔して、多分泣くの我慢してたと思う、言ったわけ。それからその子のことずっと好きだった」
「へえ……」
「すぐ転校しちゃったけどな。その子好きになったのはみんなと違う事を堂々としてたからなんだよ、俺は黙って座ってることしかできないから」
「……」
「今でもそうなんだ。一人でいるのはさみしくて楽で、でも誰かと一緒にいるともっとさみしい。もっとっていうか、さみしさの種類が違う」
備府はゆっくり体を起こすと水を含んで口をすすぎ、東屋の外に吐き捨てた。
「矢追はこうやってすごく良くしてくれるけど、不思議で仕方ない……」
「…僕は………朝顔さんの声が聞こえなくてもそれらしいこと言ったんじゃないかな」
「……なんだよその顔」
矢追の胸を新鮮な感動のようなものが満たしていた。
「俺最初は利用されたり笑われたりするんじゃないかと思ってたわ」
「ひどいな」
「変な奴だよな…矢追って。なんで俺なんかに構うわけ?」
「なんでって言われても……」
備府は答えを期待しているわけではないようだった。いつもの態度が嘘のように立板に水と喋り続けている。
雨はますます強さを増していた。最終バスに間に合うだろうか。

地下鉄に乗ったのは三十分後だった。備府の体調はずいぶんましになったようだ。
「ねえ備府」
「あ?」
「備府って来野のこと好きでしょ」
「ば、ばか!ちげえよ」
「まあ友人として協力はしますよ。あんなだけどけっこういい子だよ」
「あんなってなんだよ!」
「話聞きたい?来野が女子高生のころの話」
「え」
「僕の家まだ先だけどもうバスないんだよね。備府は次の駅でしょ?泊めてくれない?」
「ま、まあ……や、やっぱり駄目だ!部屋きたねえし」
「そっかあ、それじゃしょうがないね。僕は雨が降る夜道をひたすら歩いて家に帰るよ」
「……コンビニでちょっと待っててくれればなんとか…」
「ありがとー備府大好き!」
「やめろ気色悪い!」
「ひどーい」
「……あ、あの」
「んー?」
「さっきはありがとな」
「…んふ」
「キモっ!」
「備府かわいー!!」
「うるせえ!離れろ!」
「あ、着いたよ!僕らの愛の巣に帰ろうか!」
「黙れ!変な誤解されるだろ!」
「んふふふふ」
「こっちみんな!しね!!」
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