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爆笑した

おお、今回の話は長くなったなあ

二つにわけよう

そういえば矢追の物語の大筋は固まったな

……このペースだとどんだけかかるんだ?

嫌だー!シリタクナーイ!

試算

爆笑

がんばります!!

初恋(前)(やおいとびっぷとライトノベルとどうじん)

今朝方まで降っていた雨はあがった。晴れたせいで降りてきたばかりの水が天に帰っていく。蒸し暑い。間もなく梅雨入りだろうと矢追は思った。
矢追は備府と学生ホールに居る。空調が効いているとは言い難い。四人掛けのテーブルの冷たさが腕に心地よかった。
「今日暑いね。夏が来たみたい。そうだ、備府君お酒好き?」
「好き…ってほどじゃない。飲めるけど」
「あーそうなんだ。今日7時から部室で飲むんだけどどう?飲みよりも与汰話がメイン。来野が惨劇文庫の新作について語りたいらしいよ」
矢追が追いかけ回しているせいか、備府は矢追の周囲の人間とも顔見知りになっていた。ライトノベルの趣味が来野と合うらしく、最近は矢追抜きで談笑していることもある。
「え!?あっうん、行く。行きます。あ、でも俺部外者なのに平気か?浮くんじゃね?」
「大丈夫だよ。幽霊部員ばっかだから誰も気にしないって。来野に会いたいでしょ?」
「そんなんじゃねえし!」
ほんのりと備府の頬が赤くなるのを微笑ましく思う。
(はまってるなあ)
電話台が決定的だった。あの一瞬、たしかに自分は壁に染み付いた幾多の言葉の断片に触れたのだ。
黙ったまま彼と目を合わせて知った色を忘れない。
一方的な思い込みなのかも知れない。しかし矢追は信じていたかった。
(こんなロマンチストだったっけ僕)
頬杖をついてさらに紅潮していく備府を眺める。
「何ジロジロ見てんだよ!」
しびれを切らしたように言葉が投げ付けられる。砕けた口調も距離が縮まったようで思いがけず嬉しい。
「にやにやすんな!!」
視線を遮るように挙げた腕の隙間から備府は怒鳴った。

「やっと来た!」
部室に入ると、来野が飛び付くようにやってくる。
「備府君、『オレとおまえがセカイの中心』読んだ?」
「う、うん、今朝読み終わった」
「よし語ろうじゃないか。こっちゃこい!」
引きずられて行く備府を尻目に、矢追は片手を挙げて堂仁の隣りに座った。
「遅かったな」
「映画見てた」
「二人でか」
「そうだよ。あ、映画っていっても図書館の映像資料だよ。レーザーディスクのブレードランナー」
「二人で」
「そう二人で」
首を傾げながら矢追は缶ビールを開けた。
堂仁はサラミを噛み砕いている。
部室には二十人ほどが集まっていた。ほとんどがまだ素面で、舌戦の合間に酒で喉を潤している。
「よくつるんでるな」
「そうだねえ」
「どんなやつなんだ?なぜかあいつに避けられてる気がするんだが」
「人見知りなんだよ備府君は。話してみると面白い奴だよ」
(初めて備府君について訊かれたな)
ほとんど毎日会っていれば特に話す事もない。思い出したように二人はぽつぽつと会話した。
「お前と気が合うんなら悪い奴ではないだろうな」
「うん。けっこういい奴じゃないかな」
「『かな』ってなんだよ」
矢追は備府の姿を探した。来野と窓際で熱心に話し込んでいる。
「や、まだ距離を感じる」
「会って一ヶ月でカップルシート座ってりゃ充分だろ」
「ペアシートです」
「変わんねーよ」
もう一度目をやると、備府がチラチラとこっちをうかがっていた。
「ちょっとあっちいってくる」
「ああ」

「盛り上がってますね」
声を掛けると、勢いよく来野が振り返った。
「おお矢追いい所に来た!備府君説得するの手伝ってくれ」
「ん?どうしたの」
「うちのサークルに勧誘してるとこ。ちょっとこれ見てみ」
来野は大学ノートを広げた。びっしりとシャーペンで絵が描いてある。備府が手を伸ばすが来野はひらりと避ける。
「上手いね……備府君絵描くんだ」
知らなかった、と矢追は呟いた。
「僕よりずっと上手いなこれは」
「な?凄いだろ?訊いたら他にサークルやってないって言うしさ」
「いや、これはほんとただの落書きで……」
備府はうつむいている。
「上手いってこれ。おい堂仁もこっち来いよ」
「備府君絵が好きなら言ってくれればよかったのに」
「もうやめてくれよほんとに……」
助けを求めるように備府は矢追を見た。注目されている今の状況が嫌でしょうがないらしい。
「……はいそこまでね」
矢追は来野からノートを取り上げて備府に返した。
「なんだよー邪魔すんなよー」
「備府君嫌がってるでしょ」
「えー」
「そんな悪い子には今後アイス買ってあげませんよ!」
「ごめんなさいママ!」

皆に酔いが回って来た頃に場所を移すことになった。
「あ、僕帰るね。夏に向けて節約しないと」
立ち上がると視界が揺れている。矢追は珍しく酔っていた。
「…じゃあ俺も」備府が立ち上がる。
「またラノベの話しような」
「は、はいっ」
「俺は飲み足りない」
「堂仁堂仁、オレと飲み比べしようぜ」
「気をつけてな。気が向いたらまた来いよ」
「はい、ありがとうございます」
「敬語いらん」
「ひどっ無視すんなよ」

サークル棟を出ると雨が降っていた。矢追はかばんから折り畳み傘を取り出す。
「備府君傘は?」
「ない!」
備府もだいぶ酔っているようだ。声が大きい。
矢追は二人の頭上に傘をさすとゆっくり歩き出した。

あんよ

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