2012-2-22 22:23
2月14日祝いでボツったやつを投下します。カイトの話。最初はこちらをアップするつもりだったんだけど…(´ω`)
半端だけど追記からどぞー
今日、2月14日は特別な日だった。バレンタインデーというだけじゃなくて。
「おはようございます」
「ん……?」
「朝ですよ、マスター」
朝一番にそんな声がして、ぼやけた意識のまま生返事をする。
重いまぶたを上げて、青色が見えたところでこれが夢じゃないことに気づいた。
ミクやリンレンでなく、珍しくカイトがいて、ゆるゆると私の頭を撫でている。
「……おはよ」
「おはようございます」
目をこすりながら目覚まし時計を確認しても、やっぱり早朝にかわりない。
白い布団にしがみついたままの私に苦笑して、彼が口を開く。
「早くからすみません。だけど、『今日』をなるべく長くしたくて」
「……あ、そっか。約束」
「はい」
カイトがはにかむ。その笑顔でようやく頭がはっきりしてきた。
そう、今日、我が家にいるボーカロイドはカイトだけだ。
私が知らないうちに、みんなと話をつけたらしい。メイコから聞いた話だと、「誕生日くらい、マスターと二人きりになりたい!」と熱弁をふるったとか、なんとか。……聞いたときはさすがに顔が熱くなった。
「マスター」
「うん。ごめん、いま着替えるから」
「マスター、##name_1##さん」
「……はいはい。外で待っててね」
にこにこしている彼を部屋から追い出して、パジャマのボタンを外しながらクローゼットを開けた。
何を着よう?
たまには、スカートもいいんじゃないかな。今季に入ってすぐ買ったのに、まだ数回しか着ていないワンピースとか。
「……って、何で気合いを入れようとしてるかな……」
思わず自分で自分につっこむ。
別にカイトのことは、『そういう風』に考えてない。あちらはそう考えているとしても、私は家族として過ごしていくつもりだ。
だから、いくら特別な日でも二人きりで過ごすことに、本当は少し戸惑っていた。
「……ま、まあ、箪笥の肥やしにするより着た方がいいよね」
つかんで、一度戻したワンピースを再び出す。
言い訳をしながら。めったに着ない、一番のお気に入りに袖を通した。
◆
「お、お待たせ」
「朝食はできてますけど、トーストでいいですよね…って、」
「……え?」
「…………」
振り向きざまにお皿を持ったままのカイトが固まった。
「ちょ、ちょっと大丈夫?」
「……あ、いや、その……可愛くて」
「ハイ?」
「……##name_1##さんが可愛くて、いや違うんです、いつものラフな感じも可愛いんですけど、その服すごく似合ってるなー、と思って……見とれました」
うわ。うわ。何でそんなこと素直に言えちゃうかな。
困ったように笑っているけれど、私の方が何倍も困っている。照れるなんてレベルじゃなく、耳まで赤くなっていそうだ。
「と、」
「と?」
「トースト! 食べるからっ!!」
「あ。はい、そうですね。苺ジャムですか?」
コクコク無言で頷いた。
顔が熱い。冬真っ只中だというのに。
席について、トーストにジャムを塗りながら、長い一日になりそうだと思った。
(未完!)