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みつがなえが

10月4日(アニマックスだと22日)〜のようですね。とりあえず凄く楽しみです。
地獄関係の話はもうこのサイトに置かないつもりだったのですが、一本だいぶ前に書き上げていたのを載せておきますね。需要はない気がしますが…。
本当に今もこのサイトを覗いて下さっている方がいるのは嬉しいのです。しかしいかんせんジャンル需要が分かりません…!もう復活も本家についていけてないので。何更新すれば良いんだw
……というわけでブログ記事内の下の方に拍手付けました。要望があれば、ぽちってみて下さい。お薦めのジャンルとかでも教えて頂けたら嬉しいかも(>_<)
ペルソナはちょっと書いてみたいですけどね。うーん、まあまったり考えます。
呑気な奴ですみませんm(__)m

SWITCH




その日は陽も翳りダラシナイ空気が拡がっていた。
拡張。私のテリトリーが肥大している。そんな日は気分がいい。滅多な事では顔を出さない教室へと足を踏み入れる……彼に逢いたかったから。

(病弱だからってばかにしないでよ)

――がら。
軽くドアを開く。中には一人、教壇のところに彼がいた。何か作業をしているようで声をかけるのが躊躇われる。収縮。みっともない現実に、二本の足が少しだけ震える。

(意気地がないね)

黙って薄く開いたドアの隙間から彼を眺めていた。黒髪が垂れ、銀縁の眼鏡がずり下がっている。

「……何?」
「あ」

気づかれちゃった。彼は私の方へと数冊の本と共に歩んでくる。私はやってきた彼をただ、見上げている。
段段と心のあたりが熱くなる。狂信。言葉も喉の辺りで詰まっている。

「何してんだ、こんな処で」
「……逢いに来たよ、"先生"」
「そっか。入ればいいのに」
「気づいてくれないかな、って思った」
「気づいたけどな。ちゃんと」

ゆったりと口許を曲げて彼は笑う。張り付いたような笑顔じゃない。狡猾な狐の笑み。こんなのを知ってるのは多分、私だけだ。

「なにしてた?」
「ん、採点とか色々」
「邪魔かな」
「いや、殆ど終わってるから大丈夫」
「……うん」

彼が私の手を握る。そのまま閉鎖的な明るくない教室へ導かれる。夕陽すらここまでは辿り着かない。
二人っきり。唯一。
私は照れている。間違いなく顔まで赤い。だけどそれも含めて心地が良かった。繋いだ手越しに、彼の温度まで流れ込んでくる。

「なぁ、」
「なに」
「抱き締めて、いい?」
「……お好きにどうぞ」
「じゃあ」

遠慮なく。
彼が笑って、丸ごと私を抱いた。湯冷ましのような生ぬるい温度が私を包んでいる。恥ずかしさよりも居心地の良さ。黙って私は彼の背中に腕を回した。

「……落ちつく」
「俺も。一番落ち着ける」
「"先生"って呼ばなくていい?」
「いいよ。誰もいないし」
「わかんない。さっき廊下に誰かいたかも」
「でも、教室、鍵閉めといたから」

私が彼の名を口に出すと、彼はますます私を強く抱いた。
悪くない。気分がいい。
保健室の白よりも、私は彼のくれる紺碧の闇が好きだ。暗くて何も視えない方が、私は好きだ。ただ彼の感触を憶えていられるから。

「……好き」

その声に従うように彼は私を抱いて抱いて抱いて、そのまま焼き殺すように胸を焦がし続けて、抱いて。
抱いて抱いて。
融け合えるように抱いて。
繋がって。
蕩けてしまえばいい。全て。

「好き。俺の方がもっと、な」
「同じでいいでしょ」
「ダメ。俺、案外精神年齢低いからさ」
「……でも、私も好きだもん」

早くキスをくれればいい。
もっと欲しい。もっともっと世界が壊れる前に早く。私を壊して下さい、"先生"。
このからだを抱き締めたまま千切ってしまえば。
病を忘れるほどに。

(そうして、私はあなたのものになるの)



2008.08.20//いっそあなたに停めて欲しい、心臓
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