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『財政出動って言うけど、どこに投資するのか』などと批判されるのですが、何を言っているのかと言い返したい。老朽化した橋や道路や下水管が山ほどある。被災地の復興もあるし、日本全国、耐震強化や水害対策、やらなきゃいけないことはいっぱいあるじゃないですか。
そのことを、日本人は全然わかってなくて、低成長論者は、もうこんなに消費は要らない、贅沢はやめようと言うわけですね。その一方で、いや、新しい需要を起こさないとデフレから脱却できないという人がいる。それで新型スマートフォンだとか、現在の消費の欲望をもっと拡大させることばっかり考えるわけです。新たな産業が必要だっていうのはそういう言いぐさですよね。でも、違うんですよ。消費水準でもっと豊かな生活を、もっと便利な生活をという面では、確かに欲望は飽和しているし、それをもっと満たそうというのは、道徳的にいっても、みっともないと思います。私もその点は禁欲的です。別に海外旅行したいとか全然思わないしね。 何度も言いますが、私がやりたいのは、将来への投資なんです。『オレのことはいいんだけど、将来の子供たちの生活はどうなるんだよ』ということです。
柴山:それは、今の大人たちが本来やるべきことですよね。
中野:そうなんです。老朽化したインフラの更新投資とか、本来今やるべきことには、逆にみんな禁欲的で、公共投資をするなと言う。おかしいですよ。社会保障費、あるいは子ども手当という今の支払いのために、財源として将来の投資や公共投資を削減してるわけです。これは、ほんとにひどい話です。そこを考えると、デフレというのは、将来を考えることの著しい妨げになっているんですよね。
柴山:今の話を民間企業レベルで言うと、デフレが怖いのは、研究投資ができにくくなっちゃうからなんですね。
中野:将来のための技術開発投資ですね。
柴山:ええ。技術開発投資というのは、企業にとってもかなりのリスクなんです。山ほどお金かけて基礎研究をして、そこから新商品を開発しても、値段はそんなに上げられませんからね。これはデフレだけじゃなくグローバル化の問題もある。サムスンなどのライバル企業が安い値段で出してきたら、日本企業は値段を上げられないわけです。そうすると、何百億円も投資して新商品を開発しても、ほとんど利益を回収できないという事態か起こる。日本の家電メーカーは90年代以降も新商品をいろいろとつくっていますが、ほとんど利益につながっていない。こういう状況が続くと、1、2年で利益を回収できる商品じゃないと、そもそも投資計画が通らなくなる。5年先、10年先の利益を見込んだ投資なんてますます難しくなります。視野がどんどん短期的になるんですよ。