なんと第1回から3ヶ月が経過してしまいました…笑
謳月の独断と偏見でレビューをしていく、「盤曲草子」、第2回目です!
もうダラダラと喋っても仕方ないので早速いくぞ!
今回は…これだっ!!!
presented by yuuki 3rd Full Album
「Love Palette」
2012/03/13
¥0,000 48分10秒
全11曲
「盤」
"3枚目にして最高傑作。解き放たれた「愛情」が描くのは…"
presented by yuukiの3枚目のフルアルバムであり、「愛情」をテーマに作られたコンセプトアルバム。
前作「Mind Recording」からは実に3年の月日が経過しており、その間にシンセやピアノを取り込んだ楽曲制作に取り組むことにより、楽曲の幅広さ、引き出しの多さでは前作との差は歴然である。
そして、愛や恋ではなく「愛情」をテーマにしただけあって、ひとつひとつのフレーズを歌うにも丁寧さや表現力の面でも飛躍的に向上したアルバムといえるだろう。
これまでに、Best AlbumのリリースやDigital Singleのリリースをする度に、着実にステップアップをしてきたpresented by yuukiだが、今作でついにこれまで超えられなかった壁を越えたような、そんな自信が収録されている一曲一曲から感じられる。
1st Full Album「悪巫山戯」からのリテイクである「花に願いを」の儚くも優しく、どこか切なさを感じるオルゴールの音色で「愛情」の物語は幕を開け、そこから2nd Digital Single「夜空に咲く花」までに、V-Rockから昭和歌謡、スピード感のあるアコースティックナンバーとどれひとつとして似偏った曲で流れを意図的に作るということはしていないものの、テーマである「愛情」がそれらの点を上手く結びつけて絶妙なバランスを生み出している。
「Memories-the whisper of summer-」で前曲までの流れに寄り添いながらも、ここでひとつの章にピリオドを打つ、という役割を担い、アルバムのリードトラックとなる「パレット」が、静かなアルペジオから、写真立てを叩き割ったかのようにたくさんの音がたたみ掛け、閉じこめられていた物語を夜空に解き放つかのような感覚へと誘う。
全編ピアノのみのバラード「朧月夜」、6th Digital Single「Dear」と、presented by yuukiの持ち味とも言える「切なさ」を後半で強く印象づけたところで、「はるぎわ」が暖かで喜びに満ちた世界へと変えていく。そして「Memories-in the box-」で、たくさんの表情を持った「愛情」の物語はゆっくりと幕を下ろす。
コンセプトアルバムにして、ここまでの楽曲の振れ幅をみせることが出来ているというのは、このアルバムが「愛情」に縛られたものではなく、「愛情」から解き放たれ描かれたものであると言えるだろう。
テーマが「愛情」であることから、presented by yuukiの特徴のひとつともいえるシャウトやデスボイスを多用した曲は少ないが、それに物足りなさを感じることはなく、「聴きやすさ」を求め作られた今作は、聴く人を選ばないアルバムに仕上がっている。
制作の環境は決して恵まれたものではないが、それを感じさせないクオリティを全11曲全てに感じさせるに至った今作は、間違いなく最高傑作といえる。
「愛情」と聞くと、どこか普遍的なイメージを持ちがちな気もするが、このアルバムは、「愛情」が決して一言で説明のつくものではない、ということを体現している。
新たな作品を作る度に新たなアプローチに取り組みながら、幅広さを常に見せてきたが、ここに来てどんなタイプの曲であろうとpresented by yuukiのもにする確固としたものを、ついに見付けた作品ではないか、と感じた。
多くの人に手にとってもらいたいアルバムである。
「曲」
01.花に願いを
1st Full Album「悪巫山戯」からのリテイク。
儚くも優しいオルゴールの音色が楽曲にも、アルバム全体にも重要な意味を持たせている。
まっすぐなナンバーでひたむきな強さも持ったオープニングナンバーに相応しい楽曲。
信じる想いの強さが、この曲の何の曇りもなく真っ直ぐな印象を持たせている。
随所で多用しているハーモニカも聞き所のひとつ。
02.ハクア
焦燥感を持ちながら突き進んでいくクールなナンバー。
丁寧に選び抜かれた言葉達が生み出す世界と、特別高いわけではないけども、色を持ったサビのメロディーが非常に印象的。
ヴォーカルも、クールさを持ちつつ、芯のある歌い回しが楽曲とかみ合っている。
随所で魅せるファルセットが儚さと美しさを浮かび上がらせ、それらを押し流すようにバンドサウンドが速度を緩めず進んでいく。
謳月激推し曲。
03.六弦の反動
アコースティックギターとキーボード、ドラムという構成で作られた疾走感のあるナンバー。
歌詞にもある「単純かつ複雑な」想いをまっすぐに届けと歌いながらも、どこか不安も見え隠れする。
手放しで突き進むというわけではなく、矛盾を抱えながらも進む。
青春の青さを感じる爽やかな楽曲。
04.微熱
哀愁漂う昭和歌謡的アプローチの楽曲。
前作「Mind Recording」収録の「仮面」や7th Digital Single「哀愁歌謡祭」などのように、こういうタイプの楽曲はpresented by yuukiの代表的なアプローチのひとつと言えるだろう。
サビの裏で鳴っているシンセや歪んだギターの音色が、より一層切なさを演出している。
決して主張しすぎることのないアコギソロが、この曲が如何に緻密に作り上げられているかを感じさせる。
05.夜空に咲く花
2nd Digital Singleのラブバラード。
1番まではピアノのみで幻想的な雰囲気を持ちつつ進むが、2番からはバンドサウンドが入ることにより、その情景がより鮮明になっていく感覚を覚える。
この物語が幻想ではなく、リアルなんだ、というような効果をバンドサウンドがもたらしている。
そしてギターソロが、この曲が持っている空気感を壊すことなく、見事に色づけをしている。
8分超だが、それほどの長さを感じさせない、しっかりとした世界をみせてくれる楽曲。
06.Memories-the whisper of summer-
インスト曲。
タイトル通りに、夏の穏やかな風景を連想させる楽曲。
花火が残した輝きがゆっくりと落ちてきて、川や大地に静かに還っていくようなイメージと、すぐそこに夏の終わりが近付いてきているような感覚も感じさせる。
07.パレット
アルバムのリードトラック。
堰を切るようにたたみ掛けていくナンバー。
ひとつの物語がはじけて夜空に浮かんでいくけど、それは前曲のように花火がくれる暖かさではなく、切なく冷たいもの。
溢れて壊れてしまいそうな思いを抱えながら、冷たさを持ちスリリングに歌い上げている。
楽曲としての完成度も非常に高く、全パートにこだわりをもって作り込まれている。
中でもベースラインはpresented by yuuki楽曲の中でも随一の存在感。
間奏部分のアナログシンセサイザーの音色も聞き所のひとつ。
1st Best Album「MUSIC IS MY LIFE Vol.1」収録の「3分前」の続編とも言える楽曲。
アルバムの核として相応しい完成度を持っている。
08.朧月夜
全編ピアノのみで構成されたバラード。
高音でたたみ掛けるサビが、この曲が持っている崩れ落ちてしまいそうな心の叫びに聞こえる。
そこまではそういった想いを隠しつつ歌っているように感じ、サビでも全てを出すのではなく、見え隠れするくらいの出し方をしている。
失恋後の呆然とした心の在り様をうまく表現している楽曲。
09.Dear
6th Digital Single。
構成にもかなり拘りを持って作り込まれたナンバーなだけあって、聴き応え満点。
6分程ある楽曲だが、その長さを感じさせない、この曲の世界に聴き手を引き込んでいく強さがある。
静も動も上手く表現し、様々な情景を見せてくれる。
シンセとバンドサウンドのバランスが絶妙で、ミックスの技術も格段に向上したと感じさせる楽曲に仕上がっている。
歌詞でも、楽曲同様にかなり作り込まれており、一方向から見たのではこの曲の全貌を推し量ることは不可能、というような出来栄え。
詞がそういう風に、色々な示唆を持つ様に、楽曲も目まぐるしく世界が移り変わっていく。
何度聴いても飽きが来ない曲とは、こういう曲のことではないだろうか。
10.はるぎわ
presented by yuukiではなく、フォークデュオ、「ぽんかん」時代に作られた曲のセルフカバー。
アルバムの中で、もっとも暖かみのある「愛情」を感じさせるパーティソング。
ここまでにいくつも「切なさ」を含ませてきたが、ここにきて優しさ、暖かさ、楽しさを全開にした楽曲をもってくる辺り、にくい。
憂いを募らせた秋、冬を越えて、暖かな春を迎えようとしている。
どんな人々にも、春が愛情を注いでくれますように。
そんなメッセージを感じる楽曲。
11.Memories-in the box-
最後を飾るインスト曲。
ここまでに描かれたたくさんの形の「愛情」を優しく包み込むようなオルゴール。
ゆっくりとたくさんの物語をアルバムにしまって閉じていく。
またいつでも簡単に開けることのできる、オルゴールのようなアルバム、という印象をつけるのに十分な役割を果たしている。
久々ということもあって、結構丁寧にやってみました。
では、最後に謳月鍵汰による独断と偏見で評価を付けさせていただくならば…
「Love Palette」は、
醐です!!!!!!!!
2回目にして出ました!最高評価!笑
やはりアルバム全体の完成度と、聴き手を選ばないというところが大きいです。
コンセプトアルバムっていうのは、そこに寄りすぎると偏ったり聞きにくいものになったりすることもあると思いますが、
この作品は、むしろそのコンセプトを持ってして、「こんな方向のアプローチもあるんだよ?」と見せつけているかのように、
自分の色をうまく出していると感じました。
ということで、5段階評価の5にあたる「醐」とさせていただきました。
とまあ、3時間かけて全力でレビューしてみましたが、
いかがでしたでしょうか??
まだまだ2回目ということで、言葉の引き出しも未熟ではありますがね、
その辺りは今後、数を重ねていくしかないですね。
とにかく、この「Love Palette」、是非聴いていただきたい1枚です。