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魔王と勇士は久し振り
西の地に向かう道中。
「おやおや、珍しい人に会ったものだ」
「ニクス……!」
「ふふ、久し振りですね。カレル」
魔王と呼ばれるようになってからも、この人物の柔らかな口調と物腰は相変わらずだ。
久方ぶりに顔を合わせた黒衣の魔術師を眺めて、カレルはそう思った。
「お前も例の妖魔にか」
「ええ、まあ。
ですが貴方が行くなら、私が向かう必要はないかもしれませんね。
メレディアに戻ってお茶でも飲んでいようか」
「いや、待て待て!」
魔術師はやって来た方角へ今にも引き返そうとしている。
カレルは慌てた。
魔王のお仕事 妖魔討伐
「西の地に妖魔が現れたらしい」
カレルの言葉を聞いて、彼と行動を共にしている小妖精が不安そうな表情をする。
「カレル様……!」
「心配いらない。俺が行かなくてはな」
正直にいえば、手に負える相手かどうか不安だった。
しかし、この地に生きてきた歴戦の勇士として、人々に脅威を与える者が現れたとなれば討伐に向かうのが自分の務めだ、とカレルは思っていた。
……
時を同じくして、ニクスの城。
「妖魔か……。これはいけない」
「お出になるのですか?」
「ああ。留守を頼む」
「はっ」
「風よ、我が身を運べ」
西の地はメレディアにある城から遠く離れていたが、魔術師は風の力を借りて高速で駆けた。
魔法の風に包まれて移動しながら、ニクスはひとりごちた。
「まったく……、“悪”をやるのも楽ではないよ」
魔王のお仕事 勇者志望者への応対
城門の前で叫んでいる者たちがいる。
「ニクス、出てこい!」
「お前を倒す!!」
城内の兵士がためらいがちに魔術師に告げる。
「ニクス様……あのような者たちが来ていますが」
いくぶん痩せた長身の体に漆黒のローブを纏った魔術師は、鷹揚に片手を上げた。
「ああ、良い。彼らは私に相手をしてほしいのだな。
どれ、今出てやろう」
長い髪をなびかせて城門へと続く廊下を歩きながら、黒衣の魔術師は呟く。
「ふむ……強い力を持つというのも面倒なものだ」
黒衣の魔術師
メレディアの地の険しい山の中にそびえる、
高い塔を備えた城。
“黒き魔術師”と呼ばれる人物はそこにいる。
その者の名は――ニクス。
がんばれ魔王様 この物語について
人々に怖がられたり討伐されそうになったりしながら頑張る、ある魔王のお話。
配下の者たちとの間に力の差がありすぎて責任者自ら頑張らなくてはならないことが多いのは、魔王にはよくあること。
ニクスの口調がまだ不安定です。
偉そうな口調だとメアリースーになりそうな予感もするので、敬語で腰を低くした方がいいかも、などと考えながら様子見中。
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2018年5月(6)
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