〈振り向いてくれたけれども「がんばれ」はたぶん自分に言った言葉だ〉――。残業続きで恋人に会えない夏の日々、文芸部の美少女と何も起こらなかった高校時代、今も発熱し続ける叶わなかった夢……。短歌の背景にはいつも、淋しくて優しいストーリーがあった。日常の小さな感情を温かな筆致で描く、短い歌と短いストーリー。オオキトモユキの筆による、ユーモラスで少し悲しい絵物語も同時収録!
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解説が、長嶋有さん。
まさか、と思いましたが…昔のかつくらで、この本の秀逸さを誉めていた長嶋さんが、解説に抜擢されたそうです。
あれが原因で私もこの本を手に取ったのだから、正に合縁奇縁ですね。
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枡野さんは禿頭の歌詠みです。
読む短歌はどこか哀しくて優しい、後ろ向きのものばかり。
感染はあの冬の日のそれっきり潜伏期間九年の恋(P.23)
書きたい歌はまだまだありますが、お気に入りはこれかな。
というか、これに添えられた短いストーリーに胸を貫かれました(笑)
全ての歌に製作した状況を表したストーリーが添えられているのですが、この歌に添えられたストーリーは、叶わない夢の忘れ方でした。
誰だって夢(夜に見る物じゃない方)は見るし、叶わない事も多いのが夢です。
大人になったら、夢なんかどうやっても叶わないものだと解る時期が来ます。
でも、長い間想っていた夢は忘れられないのもまた事実。
そんな夢を、どうしたら良いのかが書いてありました。
枡野さんはやっぱり歌詠みですね。ロマンティストです。
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タイトルが好きです。
普通であれば「淋しいのはお前だけじゃない」となる筈だと想いますが、敢えて最後の1文字を消した事で、老翁の声からしみじみと上から目線で哀れまれている様な、そんな気持ちにさせられます。
この本は「淋しいのはお前だけじゃない!」と若者から断定されるより、「淋しいのはお前だけじゃなぁ…」と老翁から哀れまれる方がずっとお似合いです。
「そうか…可哀想になぁ、人生色々じゃからなぁ…」とか続きそうなイメージです(笑)
本当に辛い時は「まぁ元気出しなよ!その内良い事あるから!」と無理に慰められても逆に納得行かない時がありますが、この本は「そっか…大変だったね…」と黙って聞いてくれる本です。
そっちの方が元気になれる時もありますね。
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枡野さんの短歌は、型に囚われていない上に季語も入っていませんし、普通の短歌が好きな方から見たらあまり好まれないかもしれませんが、型破りという感じがして、私は好きですね。
形無しなのではありません、型破りです。
もっと枡野さんの短歌が読みたいです。
叶わない夢は、永遠の片思いのように、そのまま心の隅で発熱し続ける。人にはたぶん、「叶ってほしくない夢」や、「思い続けたい恋」というものがあるのだ。